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2022年ラインナップ総評

更新日:2021.09.30

今月初旬に2022年度こまばアゴラ劇場ラインナップを公開しました。

いまだに収束する気配のない不透明な状況の中、それでも精力的に活動を続けている劇団や演劇関係者、感染症対策にご協力いただいた上でご来場してくださるお客様には頭が下がる思いです。

そこでこまばアゴラ劇場としてできることを考え、ラインナップ選定のプロセス、データを公開し、劇場からの目線で社会的に演劇界が今どのような状況にあるか、ご期待を寄せていただいているお客様、ラインナップにご応募いただいたカンパニー、また今後の演劇界へ向けて、総評を作成することにいたしました。

ラインナップ選定会議は2021年8月13日にこまばアゴラ劇場にて行いました。選定は応募カンパニーに応じて柔軟にその年の方針を決定していくため、あらかじめ基準のある状態で選定をしていくわけではありません。

それはこまばアゴラ劇場が、2021年度よりキャッチコピーとして掲げている「ここに劇場がある」に則った、広く表現者に開かれた劇場を目指しているからです。

選定プロセスについて

ラインナップ選定は、芸術総監督・平田オリザとこまばアゴラ劇場制作、青年団制作から組織されたプログラムオフィサーにより行われます。

選定プロセスは以下の通りです。

プログラムオフィサーによる応募書類の読み込み
プログラムオフィサーによるプレ会議
芸術総監督・平田オリザとプログラムオフィサーによるラインナップ選定会議

1.プログラムオフィサーによる応募書類の読み込み

カンパニーのみなさまから送られてきた、企画内容、活動実績、今後の計画目標などの応募資料をプログラムオフィサーが読み込み、各自で要点をまとめておきます。

プログラムオフィサーの中に観劇した者のいないカンパニーについては、添付資料として送られてきた過去公演の記録映像、戯曲、企画書などを拝見し、カンパニーの活動をできる限り把握できるよう努めます。

 

2.プログラムオフィサーによるプレ会議

平田とのラインナップ選定会議の前に、プログラムオフィサーのみでプレ会議を行います。各自がまとめてきた要点をもとに、それぞれの意見や観劇したプログラムオフィサーがいればその観劇体験を共有します。

 

3.芸術総監督・平田オリザとプログラムオフィサーによる本会議

プレ会議でプログラムオフィサーの意見を取りまとめた上で、平田を交えラインナップ選定会議を行います。プログラムオフィサーの意見と平田の意見を突合せつつ、その年の採択カンパニーを決定します。その後、各カンパニーの利用希望を付き合わせながら、年間スケジュールを確定させます。

 

◇ラインナップ選定のポイント

こまばアゴラ劇場は広く表現者に開かれた劇場を目指し、作品そのものに期待されるクオリティーのほかには企画に関わる応募条件を定めていません。そのため公演実績が豊富なベテランのカンパニーも、まだ公演実績のない新規立ち上げカンパニーも、できる限りフラットな視点で選定を進めます。

ラインナップ選定では、公演の企画内容を最も重視しつつ、劇場の年間プログラムとしてのバランスも考えながら、総合的に判断します。

具体的には以下のような視点で採択カンパニーを検討します。

企画の新規性・独自性
企画の実現性
カンパニーの将来性・注目度

上述した通り、年間スケジュールを決めるのは、採択カンパニーが決まったあとですので、利用希望日程からカンパニーの選定を進めることはありません。

 

総評(劇場と社会)

新型コロナウィルス感染症の影響は厳しく、2020年度のカンパニー48団体のうち24団体が公演中止、3団体が無観客上演や映像配信での実施を行いました。また2021年度は現状、17団体のうち、5団体が公演中止となっています。予定通り公演実施を選択するカンパニー、やむを得ず中止を選択するカンパニー、いかなる結果にしても心身の苦労が絶えません。

今年度も1か月の募集期間中にオンライン説明会、オンライン劇場下見を実施。また応募に際して不安を感じている方や、応募企画をより掘り下げたい方へ向けて、応募予定内容について事前に相談できる面談を設定し、応募を考えるカンパニーへのサポートを可能な限り行ってきました。それは常に、採択する側である、劇場側の責任についても問う必要があると考えているためです。

ラインナップ選定の結果は様々な“現在”が現れました。
企画段階ではあるものの、実施の確実性や、長期的な計画性、座組構成など、よりよい創作のアイデアを持つカンパニーを採択しています。

新型コロナウィルスの最大の影響は、首都圏のロングラン公演を行うカンパニーに出ています。実際2020年度のラインナップを見てみると、2週間以上の劇場利用を行う団体は、こまばアゴラ劇場のレジデントカンパニー「青年団」のみとなっています。

そのかわり、各々の活動拠点に根付いて活動を続けるカンパニー、再演を含めた創作の向上を目指すカンパニー、演劇、ダンスなどの、既存の表現分野に囚われない、あらゆる形の共同制作を考えるカンパニーが、月2~4団体ほど次々と上演を行います。各地の演劇賞の受賞やセレクションに登場した新進気鋭の若手カンパニーにも注目です。

劇場支援会員制度という「固定客」があり、渋谷から電車で約10分の都心に位置する、比較的気軽に訪れることの出来る当劇場を利用して、創作や、人材、動員など、カンパニーが持つべき必要な体力が育っていく場であることを期待しています。

最後に、厳しい情勢の中でも当劇場にご応募いただいたカンパニーのみなさま、足繫く当劇場に通い続けていただいている観客のみなさま、そして遠方より応援の声を寄せていただいているみなさまに心から感謝いたします。

どうか、今後ともこまばアゴラ劇場にご理解とご協力をお願いいたします

こまアゴラ劇場制作
黒澤多生、曽根千智、高橋ルネ、蜂巣もも、日和下駄

 

 

付録:データ

2020度(コロナ禍以前)、2021年度(コロナ禍中)の応募データと比較して、どのような変化があったのかを検証します。

 

<応募数>

2020→2021年度 75件→45件 40%減
2021→2022年度 45件→41件 9%減

2020年度までは、春夏と秋冬の2回に分けて応募を行っていましたが、2021年度はコロナ禍の情勢により【通年でのラインナップ募集】【劇場費無料】【応募のオンライン化】といった募集変更を行いました。通年の募集としたことによって全体的な募集期間が早まったことと、コロナ禍による来年度の見通しが立たないことから、以前よりも募集が大きく減少する予測を立てていましたが、劇場費無料の効果もあり、過半数以下の減少は免れました。

今回の2022年度募集は2021年度の募集を踏襲し、更に応募方法をオンライン応募のみに統一しました。また、例年行っていた「提携公演」の枠を停止し、「劇場費無料+制作支援金(他の助成金は利用できない)」のこまばアゴラ劇場主催公演と「劇場費5万円」の一般利用としました。

結果として応募総数は昨年度から若干の減少に留まりました。

 

<地域と首都圏(東京・埼玉・神奈川・千葉)の割合>

2020年度・・・首都圏内:60件(約80%) 地域:15件(約20%)
2021年度・・・首都圏内:31件(約70%) 地域:14件(約30%)
2022年度・・・首都圏内:22件(約54%) 地域:19件(約46%)

2021年度の首都圏の応募数は、2020年の約半数となりました。地域からのカンパニーの応募比率は年々増加し、2022年度はその比率は大きく変動しました。感染者の数が多い首都圏がコロナの影響を強く受けているためと思われます。

<主催と提携/一般の希望比率>

2020年度 主催:32件(約43%) 提携:25件(約33%) 一般:18件(約24%)
2021年度 主催:18件(約40%) 提携:27件(約60%)
2022年度 主催:22件(約60%) 一般15件(約40%)

この3年間で条件が大きく異なりますが、2022年度は主催希望が例年以上に多かったと言えます。コロナ禍によるカンパニーの財政悪化と客席数の制限により、助成金などの補填のない公演が困難になったのかもしれません。

 

<2022年度応募カンパニーの観劇有無>

※プログラムオフィサー1名以上が応募カンパニーを観劇したことがあるかどうか

全体 ある:31件(75.6%)ない:10件(24.4%)
採択カンパニー ある:23件(79.3%) ない:6件(20.7%)
不採択カンパニー ある:8件(66.3%) ない:4件(33.3%)

プログラムオフィサーの観劇の有無が選定に影響しているのか、内部で議題に上がりアンケートを実施しました。

結果は、2022年度に応募したカンパニーの約75%が観劇済みでした。また、採択カンパニーは観劇済みのカンパニーの比率が若干増加し、不採択カンパニーは観劇済みのカンパニーが減少しました。

本年度に初めて実施したアンケートであるため、あくまで参考程度のデータではありますが、暫定的には観劇の有無は選定に影響していると言えます。

 

<ラインナップ選定に関するお問い合わせ>
こまばアゴラ劇場 / (有)アゴラ企画 ラインナップ担当
〒153-0041 目黒区駒場1-11-13
TEL : 03-3467-2743
FAX : 03-3467-2984