

今年、こまばアゴラ劇場の支援会員制度は10年目を迎えました。
当初、暗中模索の中で始まったこの制度は、演劇ファンの皆さまの熱い想いに支えられ、大きく発展してきました。この間、青年団を中心に、アゴラ劇場からは、多くの才能が巣立っていきました。
私たちは、劇場が才能を育てるといったおこがましい考えは持ってはいません。劇場にできるのは、新しい才能が多くの観客と出会う場所を提供していくことだと考えています。
また、その才能が、どの方向に伸びようとしているのかを考え、微力ながら、そのお手伝いもしてきました。
先端的・実験的なな作品を目指すのか、大衆性のある作品を目指すのかによって、その進む先のマッチングや助言を行ってきました。地域や教育に関心のある演出家、国際的な活動に意欲のある演出家、それぞれに進む道筋のサポートもしてきました。
その結果、多彩な人材が、こまばアゴラ劇場から飛び立っていったことを、私たちは何より誇りに思っています。
支援会員制度の十年は、このように当初の予想以上の成果をもたらしました。これもひとえに支援会員の皆様のおかげだと感謝しております。
しかしながら、誤算もありました。一番の誤算は、追随する劇場が少なかったことです。私たちは、若手芸術家を支援するこの優れた制度が、すぐにでも日本全国の、特に公共ホールに広まるものだと確信していました。しかし残念ながら、人材を育成することが公的な劇場の責務であると認識するほどには、日本の公共ホールは成熟してはいませんでした。このことは、まだまだ時間のかかることなのだろうと実感しています。
そして、すでにお伝えしてきたとおり、事業仕分けなどの影響により、ここ二年間、こまばアゴラ劇場は助成金の大幅減額を受けて経営難に陥っています。
残念ながら、支援会員制度も、昨年の値上げに続き、今年はその規模を縮小せざるをえない状況となりました。支援会員の皆様には、どうかご理解をいただき、引き続き会員となっていただきますよう、お願い申し上げます。
私たちの小さな劇場が、日本演劇界に挑むのは、その小ささ故に、常にゲリラ戦です。
アイデアが奇抜で優れていれば、初戦では必ず勝利を得られるでしょう。しかし、それを体制の改革に結びつけられなければ、いずれ兵站は途切れてしまいます。欧米では当たり前のこの支援会員制度が日本演劇界に根付くように、どうにか、この危機を乗り越えて頑張っていきたいと思います。
いましばらくの、ご支援をお願いいたします。
芸術監督 平田オリザ
